このA-2は、ラフウェア社が1941年に3万着もの納品を果した3度目の生産ロットにあたるモデルがベース。1930年に型紙が誕生したA-2は1943年まで約13年もの長きに渡って採用されたが、新型のナイロン製フライトジャケットのL-2が支給されても着用を続ける者は少なく無かった。歴戦と共に戦火を潜り抜けたA-2は皺や傷が刻まれ、それは正に兵士達の生き様を表していた。長年に渡って着込まれた強靭なホースハイドは、新品の時からは到底想像も付かない劇的な変化を遂げた表皮となり、愛着という言葉だけで片付けてしまうのはあまりにも勿体無い。唯一無二の表情を持ったA-2を、兵士たちは片時も手放す筈もなく、擦り切れたライニングを張り替えてまで着用するほど絶大な人気を集めていた。任務遂行のためにこの世とあの世の往還に明け暮れ、女っ気の無い軍隊生活を強いられた兵士たちにとって、兵舎に送られてくる娯楽雑誌に掲載された妖艶な美女は、まさに女神のような存在であった。グラビアを飾った悩まし気な美女たちを切り抜いては壁に貼ることを繰り返し、それまで殺風景だった兵舎は瞬く間にピンナップガールで埋め尽くされ、一際華やいだ空間をもたらした。その魅惑に溢れた空間を偉大なるA-2のライニングに特別に張り替え、着る者だけが許されるライニングに隠された美学と、女神たちの微笑む愉悦に浸りたい。